兄から電話があったのは、ある日曜の夜だった。
「ちょっと相談があってさ」
珍しく歯切れが悪い。話を聞くと、兄夫婦は家の購入を考えており、その頭金を貯めるために数年間、実家で同居したいという。
両親はすでに了承済みらしい。
「父さんと母さんも歳だし、にぎやかになるのはいいって言ってる」
私は少し考えた。実家は二世帯ではないが、空き部屋は三つある。
私も結婚して家を出ているから、使っていない部屋だ。
「三部屋使っていいよ。子ども部屋と寝室と、もう一つは自由にすれば?」
兄は明るい声で言った。
「ありがとう!助かるよ!」
それで話はまとまった――はずだった。
翌日、兄嫁からメールが届いた。
件名は「同居についてのお願い」。
開いた瞬間、私は目を疑った。
《同居させていただく以上、生活スペースは完全に分けたいです。リビングは私たち家族専用にしたいので、夕食の時間帯はご両親は使用を控えてください。また、水道光熱費は折半ではなく、ご両親負担でお願いしたいです。将来的に家を建てたら出ていきますので、その間はご理解を》
さらに追い打ちのように、
《私たちが家を建てるのは将来の親孝行のためですから》
と書かれていた。
私は思わず声に出した。
「は? 何様?」
実家に“住まわせてもらう”立場で、なぜ両親にリビング使用制限をかけるのか。しかも光熱費は負担しない?
怒りよりも、呆れが勝った。
「兄に転送しよw」
私は一言も添えず、そのまま兄へメールを転送した。
数分後、兄から電話が鳴る。
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