「20万円入っていたはずです。4万円、抜きましたよね?」
落とし主のその一言で、交番の空気が凍りついた。
その日、私は歩道脇に落ちていた白い封筒を拾った。表には「給与」と書かれ、中をのぞくと現金が入っていた。
持ち主が困っていると思い、私は封筒に触れた場所や拾った時刻を覚えたまま、近くの交番へ向かった。
警察官が私の目の前で中身を数える。
「紙幣は16万円ですね。小銭も入っています」
拾得物の書類に時刻と場所を記入し、現金を数えた警察官の名前も確認した。これで持ち主に戻るなら、それでいい。私はそう思っていた。
ところが、しばらくして現れた男性は封筒を見るなり、強い口調で言った。
「これは私のです。でも20万円入っていたはずです」
警察官が「届けられた時点では16万円でした」と説明しても、男性は引き下がらない。
「給料として受け取って、そのまま入れていた。絶対に20万円です」
そして疑うような目を私に向けた。
私は胸が締めつけられた。拾った封筒をそのまま届けただけなのに、いつの間にか4万円を抜いた人間として見られている。
「私は中身に手をつけていません」
そう答えたが、男性は「でも足りない」と繰り返した。
すると警察官が、机の上の封筒を男性から少し離した。
「金額が違うのであれば、これはあなたの落とし物ではない可能性があります」
男性の勢いが止まった。
「いや、この封筒は会社からもらったものです。『給与』と書いてあるでしょう」
「同じような封筒はほかにもあります。
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