肉離れを起こした足を引きずりながら、新宿まで出かけた。
目的は、来週予定していた京都行きのチケットを払い戻すこと。楽しみにしていた旅行は中止になり、歩くたびに足がズキズキと痛む。
「今日は本当についていない」
そう思いながら帰ろうとしたとき、京王百貨店の催事場で大幅割引の案内が目に入った。
普段は着物で過ごすことが多く、洋服をまとめて買う機会はほとんどない。
それでも気分転換に「見るだけ」と会場へ入った。
ところが、3万2,000円の商品が85%引き。4万2,000円の商品も3万5,700円引きになっている。
値札を確認するたびに驚き、気づけば靴2足と服8着、合計10点を抱えていた。
少し買いすぎたと思いながらレジに並ぶと、後ろにいた2人組の声が聞こえた。
「あんなに持って、払えるのかな」
「あの格好でブランド物って、無理でしょ」
足をかばうために動きやすい服を着て、化粧もほとんどしていなかった。どうやら、その見た目だけで判断されたらしい。
胸の奥が熱くなったが、私は振り返らなかった。言い返すより、黙って会計を済ませればいい。
順番が来て10点をカウンターへ置くと、店員がレシートを確認しながら目を丸くした。
「85%引きの商品が複数あります。今回の催事でも、かなりお得なお買い物ですね」
私はカードを差し出した。
決済は何の問題もなく、一瞬で完了した。
後ろから聞こえていた笑い声が止まった。
さらに店員から、購入者向けの抽選に参加できると案内された。期待せずにくじを引くと、係員がベルを鳴らした。
「おめでとうございます。商品券とキャッシュバックの当選です」
周囲がざわめき、後ろにいた女性の1人が小さくつぶやいた。
「え……本当に?」
私は商品券と10点分のレシートを受け取り、振り返った。
先ほどまで笑っていた2人は、気まずそうに視線をそらした。私は何も言わなかった。それだけで十分だった。
店を出るころには、最悪だったはずの気分が少し軽くなっていた。足の痛みは消えていないし、京都にも行けない。
それでも、見た目だけで人を決めつける言葉に、感情ではなく結果で答えることができた。
私は10点の戦利品を持ち直し、ゆっくり駅へ向かった。
ついていないと思っていた1日は、最後に思いがけない幸運を置いていってくれた。