朝ドラをきっかけに、やなせたかしさんの人生を振り返る投稿が増えている中、こんな写真を見つけました。
左が手塚治虫さん、右がやなせたかしさん。二人が並ぶ写真は意外と少なく、まさに“昭和文化史の断片”のような一枚です。
手塚さんが少し前のめりで話し、やなせさんが静かに聞いている。
言葉は聞こえないけれど、二人の性格や立ち位置が不思議なほど伝わってくる気がします。
二人の年齢差は9歳。手塚治虫さんは1928年生まれ、やなせたかしさんは1919年生まれ。つまり、やなせさんの方が年上。
けれど、戦後の日本漫画界における地位は、圧倒的に手塚さんが先を走っていました。
『鉄腕アトム』『ジャングル大帝』『リボンの騎士』——手塚治虫という名前は“漫画そのもの”を象徴する存在になっていた。
一方、やなせさんは当時、三越百貨店の宣伝部に勤務。広告デザインやイラストレーションの世界で生きていた頃です。つまり、まだ“アンパンマンの作者”になる前のやなせさん。
この写真が撮られたのも、そんな過渡期だったのではないでしょうか。
二人の関係は、対立でも競争でもなく、「異なる価値観を持った創作の同志」だったように思います。
手塚治虫は、常に“未来”を描いた。科学と進化、人間の業と希望。彼の作品には、人類の行く先への強烈なビジョンがあった。
一方、やなせたかしは“今を生きる人間”を描いた。
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