夫に一か月間、徹底的に無視され続けた。
同じ屋根の下にいても、私が口を開けば空気だけが返ってくる。挨拶も返事もない。目も合わない。食卓に並べた料理は手もつけられず、冷蔵庫の中で静かに腐っていった。
最初の数日は、私も必死だった。
「何か怒らせた?」
「話し合おう」
「せめて、理由だけでも」
だが返ってくるのは沈黙だけ。やがて私は理解した。これは喧嘩ではない。夫が私の存在を消して、自分が優位に立つための“処罰”なのだと。
無視は、暴力よりも巧妙だ。証拠が残りにくく、周囲には「夫婦のすれ違い」と見える。しかし、続けられる側の心は確実に削られる。眠れなくなり、食欲が落ち、笑うことさえ怖くなる。私はその境界線まで追い込まれた。
――けれど、ある朝、ふっと糸が切れた。
泣くことも怒ることも、もう疲れた。私は「どうにかして振り向かせる」ことをやめた。代わりに、淡々と記録を取り始めた。夫が口を利かなかった日、生活費が入らなかった日、必要な連絡を無視された場面。スマホのメモに日付と事実だけを書き留める。感情は書かない。感情は揺れるが、事実は揺れないからだ。
そして私は、静かに準備を進めた。
記事はまだ終了していません。次のページをクリックしてください