2019年7月、脚本家であり小説家の一色伸幸さんは、最愛の父親を見送るために家族葬を行いました。その日、葬儀社のスタッフが一色さんに不意の提案を持ちかけます。「出棺の時間を10分早めませんか?」という言葉に、一色さんは戸惑いながらも、その理由を尋ねました。
スタッフは静かに、一色さんの父親が生前に描いた水彩画について語り始めました。
その絵の多くが海を描いたものであることに気づいた彼は、「焼き場に行く前に、海へ行きましょう」と提案しました。故人が愛した海を最後に見せてあげることができれば、きっと喜ぶだろうと考えたのです。
スタッフの心遣いに感銘を受けた一色さんと家族は、提案に従い、父親の棺を車に乗せて近くの海岸へ向かいました。その道中、海の風景が広がり、静かに流れる時間の中で、家族は父親との最後の時間を噛み締めました。
一色さんは後に、「あの時間は、忘れられないものになった」と振り返ります。父親が愛した海を再び見せることができたことで、心に深い安らぎを感じたのでしょう。
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