朝、カーテンを開けた瞬間、胸が一度止まった。自宅の一戸建ての駐車場に、見覚えのないダイハツ・タントが堂々と止まっていたのだ。来客の予定はない。家族にも確認したが、誰も心当たりがないという。
近づいてナンバーを見ても、やはり知らない車。エンジンは切れていて、中には誰もいない。鍵が刺さっているわけでもなく、ただ「置いてある」感じが不気味だった。
駐車場の入口を塞ぐような位置で、こちらの車も出しにくい。常識的に考えれば、すぐに警察へ連絡する場面だろう。けれど私は、その瞬間なぜか妙に冷静で、同時に腹立たしさも湧いていた。

「勝手に人の敷地に停めておいて、何もなかった顔をするつもり?」
そう思うと、怒りの矛先をどこへ向ければいいのか分からず、私はスマホを手に取った。そして半ば皮肉混じりに、SNSへ投稿してしまった。
「まだ警察に言ってないので、欲しい方いたら持ってって下さい。こちらは通報とか一切いたしませんので。ま、こんな安そうな型落ち軽なんて、誰も触りたくもないかなww」
書いた直後は少しだけ気が晴れた。だが、時間が経つほどに背中が冷えていった。冗談のつもりでも、これは軽い話ではない。もし盗難車だったら? もし近所で何か事件が起きていて、この車が関係していたら? 私の敷地が“置き場”にされた事実だけで、十分に気味が悪い。
コメント欄には「それ、トラブルの匂いしかしない」「危ないからすぐ通報したほうがいい」「持ってってはダメ、あなたが疑われる」と、真っ当な声が集まった。私は笑って誤魔化していた自分が急に恥ずかしくなり、同時に怖くなった。冗談では済まない現実が、車一台分の重さでそこにある。
結局、私は投稿を補足し、状況を整理して、警察に相談することにした。
誰かが勝手に境界線を踏み越えた時、必要なのは強がりではなく、記録と冷静な対応なのだと痛感した。駐車場に残るタントは無言のまま。けれどその沈黙が、こちらに「どうする?」と問い続けている気がした。
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