結婚して八年目、私はようやく自分の仕事で安定して稼げるようになった。家計を支えるために始めた在宅の業務は、地道に続けるうちに取引先が増え、月の収入が夫の手取りに並ぶことも珍しくなくなった。けれど、その事実は我が家の空気を軽くするどころか、夫の苛立ちに火を注ぐ結果になった。
「少し稼いだからって何様だ!」
ある晩、通帳を見せた瞬間、夫は声を荒らげた。生活費の不足分を補い、貯蓄も増えているのに、彼は感謝どころか私を見下すように笑った。
「お前が強気になれるのは、俺が夫だからだろ。離婚なんてしたら困るのはお前だ。世間は母親一人を甘く見ないぞ」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥で何かが静かに折れた。困る、という前提で私を縛る。私の努力も、時間も、人格も、彼の所有物のように扱う。――もう無理だ。
「離婚して」
私は淡々と告げた。震えているのは怒りなのか、解放への期待なのか自分でも分からない。
すると夫は、待ってましたと言わんばかりに鼻で笑い、引き出しから離婚届を取り出した。まるで私がいつか言い出すと決めつけ、用意していたかのような動きだった。
「ほら、書けよ。どうせ出せないくせに」
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