母の口座から生活費を引き出すのは、いつもの月末の用事だった。
窓口カウンターに座った若い行員は、通帳と印鑑を受け取ると、画面をじっと見つめたまま黙り込んだ。
「あの、どうかしましたか」
声をかけると、彼女は小さく息を吸ってから言った。
「申し訳ございません。本人以外への出金は、現在お受けできません」
私は思わず聞き返した。
「え、いつもと同じ手続きですよね。母の代理で来るのは、もう何年も続けていますが」
彼女は視線を落としたまま、はっきりとは答えなかった。
「本部からの指示で……」
それだけ言って、口をつぐんでしまう。
私は少し声を強めた。
「母は足腰が悪くて、ここまで来られないんです。今日中に生活費を渡さないと困ります」
カウンターの奥にいた年配の男性行員が、こちらの様子に気づいて席を立った。
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