長い間、引き出しの奥にしまったままになっていた通帳がありました。
もう使うこともないと思い、銀行で解約手続きをしようと記帳したその日、私は思わず手を止めました。
そこには、見覚えのない名前が十二回も並んでいたのです。
金額はすべて10万円。
しかも振り込まれた日は、毎月まったく同じ日でした。
「佐藤博史……」
その名前を何度も見つめるうちに、胸の奥にしまっていた記憶がゆっくりと蘇ってきました。
佐藤博史。
それは、私の親友だった美智子の夫の名前でした。
美智子は、子どもの頃からずっと一緒に歩いてきた大切な友人でした。
嬉しいことがあれば誰より先に報告し、悲しいことがあれば夜遅くまで話を聞いてくれる。
家族のような存在でした。
そんな美智子が、ある日、いつもとは違う暗い表情で私の家を訪ねてきたことがあります。
「恵子……お願いがあるの」
その声を聞いた瞬間、ただならぬ事情があることは分かりました。
美智子は、人に頼みごとをするような性格ではありません。
どんなに苦しくても、自分で抱え込むような人でした。
「博史の手術費用が足りないの。あと250万円だけ、貸してもらえないかな……」
そう言って頭を下げる美智子の姿を見て、私は胸が締め付けられる思いでした。
もちろん、私にも大きな余裕があったわけではありません。
それでも、親友の夫の命がかかっている。
迷った末、翌日、私は定期預金を解約し、250万円を美智子に渡しました。
「博史さんの治療に使って。今はお金のことなんて考えなくていいから、治療だけに集中して」
そう伝えると、美智子は何度も頭を下げました。
「ありがとう、恵子。必ず返すから。
記事はまだ終了していません。次のページをクリックしてください
引用元:https://www.youtube.com/shorts/IMmfuGXqY1E,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]