「お母さん、立たないで」
そう言って、純白のウェディングドレスを着た美咲が、私の手を強く握った。
その瞬間、会場中の視線が私たちに集まった。
私の前に立っていた一人の女性――その人は、美咲を産んだ本当の母親、悦子だった。
「そこは私の席です」
悦子は静かな声で、しかし当然のように言った。
「なぜあなたが母親の席に座っているんですか? 美咲を産んだのは私です。
あなたは後ろの席に座ってください」
娘の人生で一番大切な日。
私は騒ぎを起こしたくなかった。
だから、ゆっくり立ち上がろうとした。
しかし、その瞬間、美咲が私の手を離さなかった。
「お母さん、立たないで」
「ここに座るのは、私のお母さんだから」
その言葉を聞いた時、胸の奥に三十年以上積み重ねてきた記憶が一気によみがえった。
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三十四年前、美咲がまだ四歳だった頃。
悦子は家のお金を持ち出し、別の男性と一緒に家を出て行った。
幼い美咲には、母親が突然いなくなった理由など理解できなかった。
ただ、毎日帰ってくるはずの母を待ち続けていた。
二年後、美咲が六歳になった時、私は美咲の父親と再婚した。
初めて私が家族として紹介された日。
美咲は父親の後ろに隠れ、小さな声で尋ねた。
「お母さんは……もう帰ってこないの?」
その一言が、今でも忘れられない。
それからしばらく、美咲は私を「沢子さん」と呼んでいた。
無理に母親になろうとは思わなかった。
ただ、この子が安心して暮らせる場所を作りたかった。
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しかし、三年後。
突然の事故で、美咲の父親は帰らぬ人になった。
葬儀を終えた夜。
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引用元:https://www.youtube.com/shorts/Z-fwXPt6A3s,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]