義母が亡くなる半年前まで、私たち夫婦は義母と同居していました。
足と肺を悪くしていた義母とは関係も良く、私も本当の母親のように思って世話をしていました。ところがある日、事業に失敗しかけていた義弟夫婦が突然やってきて、「これから私たちがお母さんと暮らすから、今月中に出ていって」と言い出したのです。
義弟嫁は以前から義母に何度も金を頼んでいました。
それでも義母は、かわいい孫と暮らせることに心が動いたのでしょう。
私は介護の方法を細かく伝え、夫と家を出ました。
半年後。
義弟から「母が亡くなった」と連絡が入りました。
葬儀で見た義母は、以前とは別人のように痩せていました。近所の人からは、最後の1か月はほとんど姿を見ず、通院もしていなかったらしいと聞きました。
胸に違和感を残したまま葬儀を終えると、1人の弁護士が現れました。
「お母様の遺言書をお預かりしています」
後日、私たち夫婦と義弟夫婦の4人で事務所へ向かいました。
弁護士が告げた内容は単純でした。
「遺産はすべて、ご長男に相続させると記されています」
義弟嫁はすぐに立ち上がりました。
「おかしいでしょ!最後まで面倒を見たのは私たちよ!」
さらに、
「遺留分があるでしょ。私たちにも権利があるはずよ!」
と詰め寄りました。
すると弁護士は、義母が当初は兄弟で平等に分けるつもりだったものの、約3か月前に内容を変更したと説明しました。
そして、義弟夫婦が事業の債務整理などのため、義母から約690万円の援助を受けていた記録を示したのです。
弁護士は、その援助を踏まえ、今回の遺言によって義弟側がこれ以上受け取るものはないという説明をしました。
義弟嫁は青ざめました。
「だって……遺産が入ると思って借金までしてるのに」
最後まで義母を世話した理由が、その一言で見えた気がしました。
義母がなぜ遺言を書き換えたのか、本人から詳しい理由を聞くことはもうできません。
ただ、最後の数か月で何を見て、何を感じたのか。
その答えだけは、遺言書に残されていました。
そしてしばらく後、借金に追われた義弟夫婦は、自分たちの娘まで残して姿を消しました。
私たちはその子を引き取り、家族として育てることを決めました。
義母が最後に残したものは、財産だけではありませんでした。
誰を家族として信じるのか。
その選択まで、私たちに託していたのかもしれません。