正月二日、親族が二十人近く集まる夫の実家で、夫はこう言い放った。「こいつは俺に食わせてもらって一日中ゲーム。寄生虫から解放されたいわ」。場の空気が少し冷えたが、義母は満足げに笑い、私は膝の上のバッグを黙って握りしめていた。
夫は毎月の手取りがわずか七万円ほどしかない。自営業の友人の手伝いという名目で、週に三日ほど働いているだけだった。
それなのに親族の前では「大手IT企業の正社員」だと嘘をつき続け、義母もそれを信じて近所に自慢して回っていた。実際の生活費は、私が在宅で行っている海外企業向けのシステム開発の収入で、ほぼすべて賄っていた。夫のプライドを傷つけないよう、私はそのことをずっと黙っていた。
数日前、私は自分の通帳を見て言葉を失った。老後のためにと少しずつ貯めてきた口座から、毎月五万円、八万円と、不自然にお金が引き出されていたのだ。それは、亡くなった母が「何かあった時のために」と、私の名義で残してくれた大切なお金でもあった。引き出しはいつも、私がリモート会議で部屋にこもっている火曜日の午後に行われていた。
半年ほど前から、夫の様子には小さな違和感があった。見慣れない高価な革靴を履いていたり、上着から甘い香水の匂いがしたりした。「社長にもらった」「仕事の付き合いだ」と、夫は目を合わせずにそう答えるだけだった。義母のもとを訪ねた際には、「浩司が来年、新しい家を建ててくれる」と、義母が嬉しそうに話していたことにも、私は強い違和感を覚えた。
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