異変に気づいたのは、風呂上がりだった。
脚の付け根に近い部分が、白く粉を吹いていた。
触ると、細かな皮膚がポロポロと落ちる。
強い痛みはない。
ただ、時々むずむずとかゆかった。
私は深く考えなかった。
最近は汗をかくことが多かった。
細身のズボンを長時間はいていた。
歩くたびに皮膚同士が擦れていた。
「乾燥と摩擦だろう」
そう決めつけ、いつも使っている保湿剤を塗った。
しかし、三日たっても治らなかった。
むしろ白く剥ける部分が広がり、周囲に薄い赤みまで出てきた。
次に使ったのは、家に残っていた湿疹用の塗り薬だった。
塗った翌日は、赤みとかゆみが少し引いた。
「やっぱり湿疹だったんだ」
私は安心した。
ところが一週間後。
皮膚の中央は少し落ち着いて見えるのに、外側だけが広がっていた。
円を描くような赤み。
その縁に沿って剥がれる皮膚。
夜になると強くなるかゆみ。
私はそこで、ようやく皮膚科へ行った。
診察室で医師は患部を見たあと、こう言った。
「見た目だけでは決められません。乾燥や摩擦性の皮膚炎にも見えますし、白癬やカンジダなどの真菌症の可能性もあります」
股や皮膚の重なる部分の皮むけは、汗・蒸れ・摩擦による間擦疹、接触皮膚炎、湿疹、乾癬、真菌感染など、複数の原因で起こり得る。
特に股部白癬は、赤く鱗状になってかゆみを伴い、輪のように外側へ広がることがある。
医師は小さな器具で、剥がれている皮膚を少しだけ採取した。
痛みはほとんどなかった。
採った皮膚を検査液に入れ、顕微鏡で確認する。
数分後。
医師は椅子へ戻り、画面を指した。
「真菌が確認できます」
私は言葉を失った。
乾燥ではなかった。
保湿だけで治るものでもなかった。
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