結婚と離婚。それは芸能界でも、避けて通れない人生の分岐点だ。
バラエティ番組『吉田と粗品と』の放送で、お笑いコンビ・霜降り明星の粗品が語った「離婚報告」の裏話が、静かに、しかし確実に視聴者の胸を打った。
それは彼が尊敬してやまない先輩、中居正広からもらった“たった一言”にまつわるエピソードだった。
番組で粗品は、淡々と、しかしどこか笑いを含みながらこう切り出した。
「結婚した瞬間に“丸”が1個ついてんねんから」
会場が一瞬静まり、出演者たちが“?”という顔をした次の瞬間、彼はその意味を補うように続けた。
「今“バツ1”って言うけど、 あれ、プラマイゼロやから。 結婚して丸がついて、離婚で消えるだけ。 マイナスやないねん。」
その言葉に、スタジオの空気が少し変わった。
笑いの中に、ほんのりと温かさが滲む。
中居正広がかつて言ったという「その考え方」、それを粗品が今も覚えていて、自分の経験として語る──。
それはまるで、“失敗を笑いに変える”という芸人の哲学そのもののようだった。
番組を観た視聴者の間でも、「中居くんらしい励まし方」「バツがつく、じゃなくて丸が消えるって発想が素敵」「粗品の表情が優しかった」といった声が広がった。
彼のトーンは決して重くない。むしろ軽妙で、どこか自虐的で、それでいて誰かを励ますような柔らかさがある。
この発言には、「離婚=失敗」という固定観念を、ユーモアで軽やかに塗り替える力があった。
芸人という職業は、人の痛みや恥を笑いに変える特殊な仕事だ。だからこそ、自分の痛みをもネタにして、“人間”としての深みを増していく。
粗品のこの話は、離婚というテーマを扱いながらも、どこか爽やかで前向きだった。
彼の中で、中居正広という存在は、「背中で笑いを教えてくれる人」なのだろう。
人生には、足し算も引き算もある。でも本当は、全部ひっくるめて“ゼロに戻る”ようにできているのかもしれない。
丸がついて、消えて、また新しい丸が描けるように。
あの日のスタジオで笑っていた粗品の目には、そんな“人としての強さ”が映っていた。