日曜の昼、静かな住宅展示場の前。モデルハウスを見学する家族連れの中に、突如、海パン一丁の男が現れた。
キャップを被り、サンダルを履き、カラフルなブーメランパンツが街の風景にやけに映える。
通りすがりの人が二度見し、スタッフが一瞬固まる。けれど、その顔を見た瞬間──みんな、なぜか納得した。
「……あ、小島よしおだ。」
本人の投稿には、たった一言。
「ステージから楽屋への移動です。」
その淡々とした一文が、逆に破壊的なインパクトを持って広がった。
SNSでは瞬く間に拡散され、タイムラインは笑いとツッコミであふれた。
「せめて羽織りなさいよ」「一般人がやったら職質もの」「キャップが唯一の防具」「でも、筋肉すごい」
──そんな声が次々と飛び交い、“平和な騒ぎ”となった。
しかし、その笑いの裏には、多くの人が小さな感動を覚えていた。
「病室で見て思わず笑った。元気をもらった」「誰も怒らないのがすごい」
そう。彼が裸で歩いても、不思議と誰も不快にならない。むしろ見る人を笑顔にさせる。
2007年、「そんなの関係ねぇ!」のフレーズで一躍ブームを巻き起こした男。
16年経った今も、同じスタイルのまま、同じテンションで笑いを届けている。
時代は変わり、テレビの景色もSNSの流行も移り変わった。それでも彼は裸のまま。それが「芸」ではなく「生き方」だからだ。
かつて彼は語っている。
「人に笑われてもいい。それで誰かが少しでも前向きになれるなら、それが一番うれしい。」
その言葉どおり、ステージが終わっても、カメラが回っていなくても、小島よしおは“海パン芸人”であり続ける。
住宅街を歩くこの姿も、彼にとっては舞台の延長線なのだ。
SNSの時代になり、多くの人が「どう見られるか」を気にするようになった。
誰もが安全な立ち位置を選び、失敗や笑われることを恐れる。
でも彼は、そんなことお構いなし。「そんなの関係ねぇ!」という原点を、今もそのまま体現している。
笑いながら誰かを元気づける人がどれだけいるだろう。見た目はギャグでも、その根底にあるのは誠実さだ。
裸で歩く男を見て笑う人も、いつのまにか心の鎧を脱いでいる。
今日もどこかの街で、ステージから楽屋へ向かう彼がいる。
誰かに笑われても、誰かが笑顔になるなら、それでいい。
──そんなの、関係ねぇ。