子どもの足に、突然、黒い斑点が現れた。
最初に気づいたのは、風呂上がりだった。
「ちょっと待って。足、どうしたの?」
私はタオルを持ったまま、しゃがみ込んだ。
両足の甲に、薄茶色から黒っぽい斑点がいくつもある。
昨日までは、こんなものなかったはずだ。
泥でも踏んだのかと思い、濡れたタオルで強めに拭いた。
落ちない。
石けんで洗った。
それでも消えない。
むしろ明るい浴室で見ると、数が増えているように見えた。
「痛くない?」
「痛くない」
「かゆい?」
「別に」
子どもは平然としていた。
怖がっているのは、私だけだった。
翌朝。
もう一度確認すると、斑点は残っていた。
昨日より濃くなったようにも見える。
頭の中に、嫌な言葉ばかり浮かんだ。
感染症。
血管の病気。
内臓の異常。
学校で何かうつされたのかもしれない。
私は仕事の予定を変更し、その日のうちに皮膚科へ連れて行った。
待合室でも、何度も足を見た。
検索すればするほど、不安は増えた。
「黒い斑点」「子ども」「足」
画面には、見たくもない病名が並んだ。
診察室へ呼ばれ、私は写真まで見せながら説明した。
「急に出たんです。
洗っても落ちなくて、増えている気がして……」
医師は子どもの足を持ち上げ、光を当てた。
指で斑点の表面を軽くこする。
爪の状態を見る。
足の裏も確認する。
そして、意外なほど落ち着いた声で言った。
「最近、かなり多いんですよ」
私は身を乗り出した。
「まさか、学校でうつったんですか?」
医師は首を横に振った。
「感染症らしい出方ではありません」
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