母は「買い物に行く」と言い残し…二度と戻らなかった──12年後、家族は真実と向き合った。
「すぐ帰ってくるからね」
十二年前の朝、佐藤慶子はそう言って家を出た。
果物と豆腐を買ってくるだけの、いつもと変わらない外出のはずだった。
しかし、その日を境に、母は二度と玄関のドアを開けなかった。
息子の憲二は、当時まだ六歳だった。
母の匂いも、声も、抱きしめられた感触も、年を重ねるごとに少しずつ薄れていった。けれど、「なぜ母は帰ってこなかったのか」という問いだけは、胸の奥に沈んだまま消えることはなかった。
十二年後。
十八歳の誕生日を迎えた朝、長崎の小さなアパートには冷たい雨音だけが響いていた。父は数年前、出張先で事故死していた。祝ってくれるのは、認知症の症状が出始めた祖母だけだった。
その祖母が、ふいに口を開いた。
「カバン……手紙……警察に知られたらだめ。私が隠したんだよ」
その一言が、憲二の運命を変えた。
母の失踪後、ずっと鍵がかけられていた部屋。
父が「いつか慶子が帰ってくるかもしれない」と言って残していた部屋だった。
憲二は震える手でドアノブを外した。
開いた部屋には、止まった時間がそのまま残されていた。化粧台、古いベッド、幼い自分を抱く母の写真。そこに写る母は笑っていたが、目の奥にはどこか怯えた影があった。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=VjFucuXxytM&t=2s,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]