晩秋の仙台は、夜になると吐く息まで白くなった。東北中央病院の救急外来に、十九歳の女子大生・桜が運び込まれたのは、そんな冷たい夜だった。
体温は四一・五度。顔は紙のように白く、髪は汗で額に張りつき、唇は乾ききっていた。東北大学に通う桜は、まじめで控えめな学生だった。地方で定食屋を営む両親は、娘の学費を必死に工面し、彼女の将来だけを支えにして生きてきた。
その桜が、講義中に突然倒れた。友人たちは慌てて救急車を呼び、病院まで付き添った。誰もが過労か重い感染症だと思っていた。だが、当直の佐藤医師だけは違和感を覚えていた。
「熱が高すぎる。普通の風邪ではありません」
佐藤医師は点滴と検査を指示し、全身状態を確認するため、桜の衣服を慎重に緩めた。その瞬間、診察室の空気が凍りついた。
腰から下腹部にかけて、黒ずんだ痣がいくつも広がっていた。転倒でできるような傷ではなかった。そばにいた看護師は息をのみ、駆けつけた母・優子はその場に崩れ落ちた。
「桜……どうして、こんなことに……」
遅れて病院に到着した父・英雄も、娘の姿を見た瞬間、言葉を失った。
畑仕事で鍛えられた大きな手が震え、握りしめた拳の関節が白くなる。怒りより先に、守れなかった悔しさが胸を刺した。
佐藤医師は静かに告げた。
「外傷の可能性があります。ご家族にはつらい話ですが、警察への相談が必要です」
その言葉に、優子は泣き崩れた。英雄は黙ったまま、娘のベッド脇に立ち尽くした。桜は意識が混濁したまま、かすかに涙を流していた。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=bz0B-EEUalU,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]