妻がスマホを差し出してきた時、目が赤かった。
「また来たの…」
画面には長文のLINE。送信時間は23時47分。
相手は子どものお稽古の先生だった。最初に会った時は、穏やかで人当たりのいい人だと思っていた。経歴も華やかで、周りからも一目置かれる存在。私たち夫婦も、その人柄に惹かれて入った。
でも、そのメッセージは別人だった。
『先生の時間に全面的に合わせます、という姿勢が欲しいところですが、如何ですか?』
『午後に予定があるのはあなたの都合。私には関係ありません』
『10時に電話します』
相談でも依頼でもない。
命令だった。
私は思わず妻を見た。
「これ、いつから?」
「ずっと…」と小さな声。
深夜のLINE、突然の電話。終わらない説教。
代表としての至らなさを指摘され、最後は先生の昔の武勇伝を延々聞かされる。
妻は“迷惑をかけたくない”の一心で受け続けていたらしい。
胸の奥で、何かがはじけた。
私はスマホを受け取った。
今まで、家族のことに怒ったことはあっても、“妻の代わりに怒る”のは初めてだった。
記事はまだ終了していません。次のページをクリックしてください
引用元:,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]