1945年11月号の特集「近代日本の仮面の下」に掲載されたこの1枚の写真には、アメリカ人女性が日本式の風呂に浸かっている姿が写されています。写真に写る女性は、特集の筆者であるウィラード・プライスの妻で、彼らは神奈川県の葉山御用邸の近くに住んでいたそうです。5年間の日本での生活を通じて、プライス夫妻は日本の文化に深く触れ、その中でも特に日本式の風呂を愛していました。
プライスが日本式の風呂を気に入ったのは、その独特な構造と入浴体験にあります。写真に写る浴槽と風呂釜は、板で仕切られており、右下から木炭を使って湯を沸かします。浴槽は見た目以上に深く、浴室の床よりも下に続いているため、全身をしっかりと湯に浸すことができました。この深い浴槽が、疲れた体をほぐし、毛穴を開いてくれる心地よさを提供してくれるのです。
プライスは、日本式の風呂に浸かることで得られる「愉悦」について、『日の出の子達』という著書の中で、「お湯の中で、愉悦を満喫し、閉じた毛孔を開き、疲れた筋肉を緩めるのは、楽しきもの」と書き記しています。
アメリカの浴槽が浅く、入浴の際に十分なお湯を溜めることができないのに対し、日本の風呂はその反対で、深くて暖かい湯に全身を包まれる感覚がとても魅力的だったのでしょう。
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