弓さん(仮名)は大手商社の営業部長として働き、家賃35万円のマンションの家賃から食費、光熱費まで生活費の全てを負担していた。夫の孝志は週に数日だけアルバイトに出る非正規雇用で、家の中では自分がこの家の主であるかのように振る舞っていた。
ある日、夫は「親父たちが田舎の実家を売った」と唐突に切り出した。売却額は3000万円だという。
しかし夫は同時に、来週の日曜日から義両親をこのマンションに住まわせると告げた。妻の仕事部屋を片付けて空けておけという一方的な指示だった。義両親の生活費は妻が全額負担すること、義母の家事もできないから食事も毎日作ることが、夫の口から次々と要求された。
数日後、残業を終えて帰宅すると、玄関には見覚えのない泥の足跡が残っていた。夫に尋ねると、義両親が留守中に合鍵を使って部屋の下見に来たのだという。妻の仕事部屋では、本棚に並んでいた専門書や契約書類がゴミ袋に詰め込まれ、義両親が置く予定のマッサージチェアのために片付けられていた。
義母からも電話があり、「うちの孝志に養ってもらっているのだから、荷物なんて邪魔なだけ」と言われた。
妻が家賃を払い、生活費を出しているという事実は、義両親の中では都合よく消されていた。
その後妻は、夫のノートパソコンに残っていた家族間のメッセージ履歴に気づく。そこには、妻名義のクレジットカードに家族カードを追加する申込書のやり取りが記されていた。署名欄には妻の筆跡を真似た文字と、見覚えのない銀行印の跡があった。妻はすぐに銀行で口座の暗証番号変更とカードの利用停止手続きを行った。
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