あの日の私は、自分でも驚くほど衝動的でした。
たった一晩でクローゼットの中から必要な服だけを選び、二つのスーツケースに詰め込みました。
そして翌朝、夫と大喧嘩をしたまま、私は成田へ向かう電車に乗っていました。
まるで何かから逃げるように。
五年後。
私は同じ玄関の前に立っていました。
ただ、あの日とは違うものを持って。
手には離婚届。
もう一度だけ、この家を自分の目で見てから、すべてを終わらせようと思っていたのです。
しかし、ドアを開けた瞬間、私は言葉を失いました。
そこにあった光景は、私が想像していた「終わった夫婦の家」とは、まったく違っていたのです。
私の名前は早坂千夏。
建築設計事務所でデザイナーとして働いています。
五年前、私は人生を変えるほど大きな仕事のチャンスを手にしました。
ドイツ・フランクフルトで行われる大型建築プロジェクトへの参加です。
五年間にわたる海外勤務。
それは私にとって、キャリアを大きく飛躍させる二度とない機会でした。
夫の洋介とは結婚四年目。
子どもはいませんでしたが、私たちなりに穏やかな生活を築いているつもりでした。
しかし、洋介の父・岐阜さんが脳梗塞で倒れたことから、少しずつ家庭の空気は変わっていきました。
右半身に麻痺が残り、生活には介助が必要になったのです。
洋介は一人っ子でした。
「父を支えたい」
そう言う彼の気持ちは理解していました。
最初は週に一度、実家へ通うだけでした。
でも、次第に回数は増えていきました。
週末はほとんど実家。
平日の夜も父親の様子を見るために帰宅が遅くなる。
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引用元:https://www.youtube.com/watch?v=GVe-28Nx3EM,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]