「俺のストライクゾーンは30代までなんだ」
そう心の中でつぶやきながら、婚活バスツアーの集合場所に立っていた男がいた。
名前は高橋誠、57歳。未婚。住宅メーカーで営業事務の課長を務める、いわゆる真面目に働いてきた会社員だった。
今回参加したのは、中高年向けに企画された「マテガイ掘り婚活バスツアー」。同年代の男女が自然な交流を楽しみながら、出会いを探すためのイベントだった。
しかし、高橋の頭の中にある「自分への評価」は、周囲から見ると大きく現実とかけ離れていた。
「俺は童顔だから、実年齢よりかなり若く見られる」
それが彼の絶対的な自信だった。
職場の若い社員から「高橋さんって50代には見えませんね」「意外とアクティブですよね」と言われたことを、彼は素直に受け止めていた。
もちろん、部下や後輩からの言葉には、尊敬や気遣いが含まれていることも多い。
だが高橋は、それを「若い女性からも魅力的に見える証拠」だと思い込んでいた。
色あせたグレーのポロシャツに、ポケットがやたら多いベージュのチノパン。
休日のホームセンターにいそうな服装でありながら、本人だけは「若々しい大人の男性」を演じているつもりだった。
バスのドアが閉まり、明るいガイドの声とともに出発する。
高速道路を走り始めると、参加者同士の一対一トークタイムが始まった。
高橋は最初の女性の隣へ座った。
相手は41歳の鈴木綾。落ち着いたベージュのカーディガンを着た、知的で穏やかな雰囲気の女性だった。
しかし、高橋はプロフィールカードを見るなり、心の中でため息をついた。
「41歳か……俺のターゲットからは少し外れるな」
記事はまだ終了していません。次のページをクリックしてください
引用元:https://www.youtube.com/watch?v=bxVlg63n9Pc&t=5s,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]