佳奈がその明細に気づいたのは、通勤用に電気自動車へ乗り換えて半年ほど経った、ある月の初めだった。ガソリン代がかからなくなり、月々の支出が読みやすくなったことに満足していた矢先の出来事だった。
いつも使っている急速充電サービス「パワーチャージ」から届いたメールに、利用金額28,600円と書かれていた。普段の月額はだいたい2,000円前後。
桁がひとつ違っていた。何かの見間違いかと思い、佳奈はスマートフォンの画面を何度も見直したが、金額は変わらなかった。
明細の詳細を開くと、利用時間の欄に「合計47時間12分」という数字が並んでいた。佳奈が実際に充電したのは、その月、自宅近くのステーションで一度だけ、時間にして15分ほどだった。
すぐにサポートセンターに電話をかけた。オペレーターは「システム上は正常に記録されています」と繰り返すだけで、金額の見直しには応じてもらえなかった。「規約の第何条に基づいて処理しています」と、機械的な説明が続くだけだった。電話を切ったあと、佳奈は同僚にも相談してみたが、「ポイントの誤反映ならよくあるけど、金額そのものが違うのは初めて聞いた」と首をかしげられるばかりだった。
納得できないまま、佳奈は個人情報保護に関する規約を読み込み、自分の利用ログの全件開示を正式に請求することにした。窓口には何度も電話をかけ、担当者を変えてもらいながら、ようやく開示に応じてもらえることになった。
数日後、書留で届いたログには、佳奈が覚えのない日時と場所の充電記録が、何十件も並んでいた。しかもその多くは、佳奈の自宅からは新幹線でも数時間かかる、まったく別の地方のステーションでのものだった。
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