夫が亡くなった日の夜、私は何度もスマートフォンの画面を見つめていた。
病院から戻った家の中は、今までとは別の場所のように静まり返っていた。いつもならテレビの音や夫の笑い声が聞こえていたリビングも、時計の針の音だけが響いていた。
夫は、長い間家族のために働き続けてくれた人だった。決して裕福な暮らしではなかったが、私と息子を守るために、疲れた顔を見せずに頑張ってくれていた。
私は涙をこらえながら、遠くで暮らしている息子に電話をかけた。
「お父さんね……亡くなったの」
しばらく沈黙が続いた。
私は息子が驚き、悲しみ、何か言葉を探しているのだと思った。
しかし、返ってきた言葉は、私の想像とはまったく違うものだった。
「……それで、保険金っていつ入るの?」
一瞬、何を言われたのかわからなかった。
胸の奥が冷たくなるような感覚がした。
「保険の手続きがあるから、すぐには無理よ。まだ少しかかると思う」
そう答えると、息子は淡々と言った。
「じゃあ、来月の誕生日のゲームは買ってね」
私は言葉を失った。
夫が亡くなったという知らせを聞いた直後に、息子が気にしているのは父親との別れではなく、自分の欲しいものだった。
「……わかったわ」
そう答えるしかなかった。
息子は昔から欲しいものを我慢することが少なかった。夫も私も、子どもには苦労させたくないと思い、できる限り希望を叶えてきた。
その結果、息子は「誰かが自分のために何かをしてくれるのは当然」と思うようになっていたのかもしれない。
数日後、息子が家に帰ってきた。
久しぶりに顔を合わせたというのに、夫の遺影を見ることもなく、部屋の中を見回していた。
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引用元:https://www.youtube.com/shorts/tpi7t1TMnXY,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]