ナイターの灯りがまだ残る球場。観客が帰り始めたグラウンドを、ゆっくりと歩く背番号30。
「才木くん、骨折じゃないらしい——」そんな投稿とともに流れてきた一枚の写真が、SNS上で静かな衝撃を広げた。
バッグを背負い、手には赤いグラブ。右手を上げてファンに応えるその姿に、いつもの力強さはない。けれど、それでも“歩いている”——その事実だけで、多くの阪神ファンが胸を撫で下ろした夜だった。
才木浩人。阪神の若きエースとして、チームの未来を背負う投手だ。彼のストレートがマウンドを支配するたび、スタンドは歓声に包まれる。だが、この日の写真に映っていたのは、戦いを終えた後の“素の顔”だった。
「骨折ではないらしい。一先ず安心。」投稿主の言葉には、安堵と同時に祈りが滲む。
——それでも、歩き方が少しぎこちない。——そして、この顔。やっぱり暗い。
現地にいたファンの証言が、コメント欄で次々と寄せられた。
「無理してないかな」「泣きそうになった」「大丈夫だよ、才木!」その一言ひとことが、まるで彼への“お守り”のように積み重なっていく。
試合を終えたあと、選手が見せる表情には言葉以上のドラマがある。勝ち負けだけでは語れない、責任と誇りと悔しさ。それを抱えたまま、ファンの前で笑顔を作る——その姿こそ、プロの覚悟だ。
この日の才木くんも、きっと同じ気持ちだったのだろう。
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