1991年、ある一台の1971年式「ハコスカGT」が、多くの人々の心を掴んだ。当時の写真を見ると、どこかノスタルジックな雰囲気が漂い、車の持ち主である筆者がこの車と共に過ごした時間がいかに特別なものであったかが伝わってくる。

その車は中古車屋の片隅に、ひっそりと存在していた。車検が1年残っている状態で、値段はなんと20万円ポッキリ。

1971年製のこのハコスカは、当時すでに20年落ちの「ただの古いクルマ」という扱いだった。店主も「本当にこれ買うの？」と念を押してくるほどだ。GTであるものの、Rではなく、標準的な4枚ドアのシングルキャブ仕様。一般的なスペックからは想像しがたいが、筆者にとって、このハコスカは何物にも代えがたい「宝物」だったのだ。

まず、タイヤに注目しよう。リアフェンダーはカットされておらず、そのためワタナベのホイールに195サイズのタイヤを履くのが精一杯だった。

この制限は当時の筆者にとっては少し不満だったかもしれないが、それでもこの「制限付き」の走りが、逆にハコスカならではの体験を生み出していたのかもしれない。

ハコスカの魅力は、その走行性能にもあった。仲間たちと一緒に、この車で海や山にツーリングへ行ったり、筑波サーキットのイベントにエントリーしてスポーツ走行を楽しんだり。決して最新のスポーツカーではなかったが、ドライバーにとって、ステアリングを握るその瞬間の高揚感は何物にも代えがたかった。

記事はまだ終了していません。次のページをクリックしてください