親切のつもりで拾った財布が、まさか自分の仕事にまで影響するとは思わなかった。
あの日は、いつもどおり会社へ向かっていた。
駅の改札へ続く通路を歩いていると、壁際に茶色い財布が落ちているのが目に入った。
周囲を見回したが、探し物をしている人はいない。
私は財布を拾い、近くの駅員室へ向かった。
「すみません。通路に落ちていました」
駅員さんは礼を言い、届け出のために必要なことを確認してくれた。
拾った場所や時間、連絡先。
私は聞かれたことに答えた。
「持ち主の方が希望された場合、連絡先をお伝えしてもよろしいですか?」
「はい、大丈夫です」
そのときは何も疑わなかった。
財布が無事に持ち主へ戻れば、それでいい。
むしろ、困っている人の役に立てたならよかったと思っていた。
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