駅のトイレで個室に入ろうとした瞬間、ドアの下から大量の黒い髪の毛がはみ出していた。
「……え? 何これ?」
最初は、誰かが髪を床に落としたのかと思った。
でも、よく見ると違った。
まるで人が個室の中で倒れているかのように、長い髪がドアの隙間から床に広がっていた。
私は思わず一歩後ずさった。
人なのか、それともカツラなのか。
どちらにしても、普通の状況には見えなかった。
しかも、個室のドアは少しだけ開いていて、中の様子はほとんど見えない。
「ちょっと待って……これ、本当に大丈夫なの?」
恐る恐る声をかけてみた。
「すみません、大丈夫ですか?」
返事はない。
もう一度呼びかけても、物音ひとつしなかった。
さすがに怖くなり、私は自分でドアを開けるのをやめた。
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