マンションのエントランスに、白い花がたくさん置かれていた。
最初は誰かの忘れ物かと思った。
でも横に、小さな張り紙があった。
「結婚式で使ったお花を飾りきれないので、ご自由にお持ち帰りください」
その文字を見た瞬間、胸の奥がふっと温かくなった。
白い花はまだきれいで、葉も生き生きしていた。
式場で新郎新婦を見守っていた花が、今度は同じマンションの誰かの家を明るくしようとしている。
そう思うと、ただの花ではなく、幸せのおすそ分けみたいに見えた。
けれど私は少し迷った。
本当に持って帰っていいのかな。
誰かが全部持っていったら困らないかな。
エントランスを通る人たちも、同じように立ち止まっていた。
ある人は写真を撮り、ある人はにこにこしながら花を選んでいた。
私も白い花を少しだけ頂こうと、紙袋を手に取った。
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