「10円いらないって返されたよ」
息子がそう言って、手のひらにお釣りを乗せてきた瞬間、私は一瞬固まった。
その日、小学生の息子が「タピオカミルクティを飲んでみたい」と言い出した。
今まで何度か店の前を通るたびに、透明なカップに入った黒い粒を不思議そうに見ていた。
でも自分から「飲んでみたい」と言ったのは初めてだった。
せっかくだから、自分で買う練習にもなると思った。
私は先にメニューを確認した。
税込605円。
息子には1000円札と10円玉、合わせて1010円を持たせた。
「605円だから、1010円を出したら405円のお釣りになるよ」
そう説明した。
息子は少し緊張しながらもうなずいた。
「自分で言える?」
「タピオカミルクティください、って言う」
「お金を出したら、お釣りもちゃんと確認してね」
「うん」
本人はちょっと誇らしげだった。
親としても、こういう小さな経験を積ませたいと思っていた。
お店で注文すること。
金額を確認すること。
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