仕事帰りの午後6時20分、駅前のコンビニに向かって歩いていたときだった。
突然、見知らぬ外国人男性に声をかけられた。
「すみません。日本語、少し分かりますか?」
私は足を止めた。
「はい。どうしました?」
男性は片言の日本語で話し始めた。
「私、今、食べ物を買うお金がありません。少し助けてもらえますか?」
正直、最初は戸惑った。
駅前で知らない人に声をかけられることは時々ある。
道を尋ねられるならまだしも、食事代をお願いされたのは初めてだった。
「すみません。私も急いでいるので……」
そう言って立ち去ろうとした。
しかし、男性は私の前で立ち止まり、何度も頭を下げた。
「お願いします。食べ物だけでいいです」
「お金を渡すということですか?」
「いいえ。コンビニで買ってもらえたら、それでいいです」
男性はすぐ近くのコンビニを指さした。
私はどうするべきか迷った。
断ることもできたはずだ。
しかし、相手の勢いが強く、うまく言葉が出てこなかった。
結局、私は男性と一緒にコンビニへ入った。
「何が必要ですか?」
「おにぎり、大丈夫ですか?」
「それくらいなら……」
男性はおにぎりと飲み物を選んだ。
私はレジに並び、支払いを済ませた。
店を出ると、男性は何度も礼を言った。
「ありがとうございます。本当にありがとうございます」
私は少し安心した。
これで終わりだと思ったからだ。
「じゃあ、私はこれで」
そう言って歩き出そうとすると、男性が突然声を上げた。
「待ってください!」
私は振り返った。
「まだ何かありますか?」
男性はポケットを探り、小さく折り畳まれた紙を取り出した。
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