18時を少し過ぎた頃、駅の改札前で、私は6歳の娘を強く叱っていました。
理由は本当に些細なことでした。帰る時間になっても娘がぐずり、何度言っても言うことを聞かず、私の中で積もっていた疲れが一気に噴き出してしまったのです。
「もういい加減にして!」
自分でも声が大きいと分かっていました。周りの人がこちらを見ていることも分かっていました。
けれど、そのときの私は止まれませんでした。
娘は改札の近くで号泣していました。小さな肩を震わせながら、何か言おうとしているのに、私の方がそれを聞く余裕を失っていました。
母親として、大人として、今思えば本当に恥ずかしい姿だったと思います。
駅員さんを呼ばれてもおかしくなかった。誰かに注意されても仕方なかった。むしろ、そうされても当然なくらい、私は冷静さを失っていました。
そのときです。
50代か60代くらいの、眼鏡をかけたショートカットの女性が、私たちの方へ静かに歩いてきました。
私は一瞬、叱られると思いました。
「お母さん、そんな怒り方はだめですよ」
そう言われる覚悟をしました。もちろん、言われても仕方ない状況でした。
でも、その女性は私を責めませんでした。
片手にはレシートとクレジットカード。もう片方の手には、小さなキャラメルがありました。きっと改札近くのお店で、わざわざ買ってきてくださったのだと思います。
女性は娘に近づくと、やわらかい声で言いました。
「よかったらどうぞ」
娘は泣きながら、そのキャラメルを見つめました。私は何も言えませんでした。
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