ガビーは毎週金曜日、祖母の墓を訪れていた。
その時間だけは、スマートフォンも持たない。
誰にも邪魔されず、祖母に話しかけるための一時間だった。
その日も、いつものように花を持って墓地へ向かった。
だが、祖母の墓に近づいた瞬間、足が止まった。
墓石の上に、大きなラブラドールが横たわっていたのだ。
毛並みは汚れていない。
首輪もついている。
野良犬には見えなかった。
ガビーは最初、誰かの飼い犬が迷い込んだのだと思った。
「ねえ、そこをどいてくれる?」
優しく声をかけた。
しかし犬は動かなかった。
それどころか、彼女が一歩近づくと、低く唸った。
まるで「ここから先へ来るな」と警告しているようだった。
ガビーは戸惑った。
祖母は犬を飼っていなかった。
家族にも、この犬に見覚えはない。
それなのに犬は、まるで何年もその墓を守ってきた番人のように、墓石から離れようとしなかった。
家族を呼び、餌や水を差し出した。
だが犬は反応しない。
視線はただ一点、墓の下へ向けられていた。
やがて空は暗くなり、雨の匂いがし始めた。
これ以上どうにもできず、ガビーたちは警察へ連絡した。
到着した警察官も、最初は簡単に考えていた。
迷い犬を保護して終わり。
そう思っていた。
だが、リードを近づけた瞬間、犬は激しく吠えた。
墓石に体を押しつけ、前足で地面をかき始めた。
その様子を見ていた警察官の一人が、ふと表情を変えた。
「今、何か聞こえませんでしたか」
全員が黙った。
風の音。
遠くの車の音。
その奥に、かすかに何かを引っかくような音がした。
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