朝から新幹線で出かけていた日のことだった。
用事を終え、帰りの新幹線に乗ろうとしたとき、思いがけない出来事が起きた。
ホームには多くの乗客が並んでいた。
私も夫と一緒に、指定された車両の入口で順番を待っていた。
列が動き始め、車内へ入ろうとした瞬間だった。
「痛っ!」
突然、右足に硬いものがぶつかった。
振り返ると、60代くらいの女性が車椅子を押していた。
車椅子には誰も座っていない。
荷物として運んでいるようだった。
「すみません、足に当たったんですけど」
私は思わず声をかけた。
しかし、女性は何も言わなかった。
ちらりとこちらを見たような気もしたが、そのまま車椅子を押して車内へ進んでいった。
「えっ……?」
私は呆然とした。
後ろにいた夫が尋ねた。
「大丈夫?」
「うん。でも今、結構強く当たったよね?」
「当たった。音もしたよ」
「それなのに謝らないんだ……」
足の痛みも気になったが、それ以上に何もなかったように立ち去った態度に驚いた。
もちろん、車椅子を使うこと自体に問題があるわけではない。
必要な人が利用する大切な移動手段だ。
ただ、車椅子であろうとスーツケースであろうと、ほかの人にぶつけてしまったら一言謝るのが普通ではないだろうか。
私はそう思った。
「もういいよ。席に行こう」
夫に促され、私たちは指定席へ向かった。
車内は混み合っていた。
大きなキャリーケースを持つ人もいれば、小さな子どもを連れた家族もいる。
通路を歩くときは、誰もが少しずつ譲り合っていた。
私は席に座り、ぶつけられた足をさすった。
幸い、歩けないほどではなかった。
「何かあったら車掌さんに言おうね」
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