店の入口前に車が堂々と停まっているのを見た瞬間、私は思わず足を止めた。
そこは駐車場ではなかった。
ガラス扉のすぐ前、自転車を置くための駐輪スペースだった。
横には自販機があり、店内の窓には駐輪場の表示も見える。
どう見ても、車を停める場所ではない。
最初は、荷物を降ろしているだけかと思った。
高齢の運転手が乗っていたので、何か事情があるのかもしれないとも思った。
けれど車はそのまま動かない。
自転車で来た人は置き場に困り、入口へ向かう人も車をよけて歩いていた。
私は少し迷った。
見て見ぬふりをすれば、面倒にはならない。
でも、ここを許してしまうと、次に同じことをする人が出る。
子ども連れや高齢者が通る場所でもある。
万が一、発進時に誰かと接触したら危ない。
だから、なるべく穏やかに声をかけた。
「すみません、ここ駐車場じゃないですよ」
すると返ってきたのは、謝罪ではなかった。
「知ってます」
一瞬、言葉が出なかった。
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