母が亡くなってから、父はずっと独りで暮らしている。
最初の頃は、私も心配で仕方がなかった。
長年連れ添った母がいなくなり、家の中は急に静かになった。
以前は、実家に帰ると必ず台所から母の声が聞こえていた。
「おかえり。何か食べる?」
その声に続いて、居間から父が顔を出す。
そんな当たり前の光景が、ある日を境になくなった。
母が亡くなったあと、父はあまり外へ出なくなった。
買い物と病院、たまに散歩。
それ以外は、ほとんど家にいるようだった。
「お父さん、友達と出かけたりしないの?」
私が尋ねても、父は決まってこう答えた。
「別に、家にいるほうが楽だから」
「でも、ずっと1人じゃ寂しくない?」
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