「やられた……!」
休日の静かな昼下がり、自宅の駐車場で愛車の後方を確認した私は、思わずその場で崩れ落ちそうになった。 なんと、大切に乗ってきた車のリアガラスが、見事に蜘蛛の巣状に粉々へと砕け散っていたのだ。 車内からは向こう側の景色が丸見えで、ガラスの破片がシートの上に無惨に飛び散っている。 一体何が起きたのかと呆然としていると、車のすぐ脇には草刈りで使うはずの「鎌」と「竹箒」が無造作に立てかけられていた。
犯人はすぐ隣の駐車場で草刈り作業を行っていた管理会社の作業員たちだった。 血の気が引く思いで私はすぐさま作業員たちの元へと詰め寄り、「ちょっと、うちの車の窓ガラスが完全に割れてるんですけど!」と抗議した。
しかし、作業員の態度は信じられないほど不誠実だった。 「いや、うちはあっち側の草刈りしかしてないんでね。この車がどうなったか知らんし、関係ないね」と、真っ向からシラを切って責任逃れをしようとしたのだ。
「ふざけるな……! すぐ目の前で作業していて、飛び石か何かが当たったのは明白だろ!」 怒りで全身が震えた。 これ以上、個人の話し合いで言いくるめられると確信した私は、その場で迷わずスマホを取り出し、110番通報した。
「警察ですか、隣の敷地の草刈り業者のせいで愛車のリアガラスが粉々に破壊されたのですが、相手がシラを切って逃げようとしています。至急来てください」
数分後、パトカ―のサイレン音が響き渡り、制服姿の警察官2名が現場に到着した。 警察官が粉々に割れたリアガラス、現場に残された鎌や竹箒、そして管理会社の作業員たちを冷静に交互に見据え、事情聴取を始めた。
形勢が完全に逆転した瞬間だった。
警察官から「状況証拠から見て、この作業による器物破損の可能性が極めて高いですが、どう弁明しますか?」と厳しく追及された瞬間、さっきまで強気だった作業員たちの顔色が一気に青ざめた。 言い逃れができないと悟ったのか、作業員は急に態度を和らげ、「……わかりました。弁償いたします。修理費用は全額お支払いしますので……」と観念したように頭を下げ、その場からそそくさと逃げるように帰っていった。
相手は慌てて逃げ帰ったものの、現場には鎌や竹箒が置き去りにされたままで、本当に大丈夫だろうかと少し不安も残る。 それでも、一応相手の会社名と担当者の「名刺」はしっかりと受け取ってある。
証拠の写真と、警察官の介入という最強のカード。 誠意のない相手には、感情的に怒鳴るよりも、確実な証拠と公的な機関を通じた冷静な対応が一番の特効薬なのだと思い知らされた一件だった。