「離婚は待ってくれ。俺が悪かった。だから戻ってきてほしい」
夫から届いたLINEを見て、私は静かにスマホを伏せた。
7年間、私はこの言葉を待っていたのかもしれない。
でも、いざ言われてみると、不思議なくらい何も感じなかった。
夫が出かけたあと、私は家の中をゆっくり見回した。
テーブルの上には、いつものように夫の食べかけの食器。
洗濯機の中には、まだ洗っていない衣類。
冷蔵庫には、夫が帰ってきたら食べるはずだった夕食が入っている。
私は小さく息を吐いた。
「もう、いいよね……」
結婚して7年。
私は妻であり、母であり、家事をする人だった。
朝は誰よりも早く起きて、朝食を作り、洗濯を済ませ、家族を送り出す。
仕事が終われば急いで帰り、夕食を作り、子どもの世話をする。
夫はそれを、当たり前だと思っていた。
私が体調を崩した日も、夫は言った。
「俺だって仕事で疲れてるんだよ」
子どもが熱を出した日も、夫は会社を休まなかった。
「お前のほうが融通きくだろ?」
その言葉を聞くたび、私は自分の仕事も、自分の時間も、少しずつ失っていった。
そして、私が限界を迎えたのは、職場でも家庭でも「我慢して当然」と扱われるようになったときだった。
職場では理不尽な叱責に耐え、家では夫から「家のことくらいちゃんとやれ」と責められる。
誰にも弱音を吐けなかった。
ある夜、私は小さな紙に退職届と書いた。
「10月24日をもって、家事・育児を退職させていただきます」
昼夜のご飯は冷蔵庫にあります。
引き継ぎ業務は行いません。
最後に「アバヨ」と書いて、私は思わず苦笑した。
冗談のような文章だった。
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