「こんな手の男性を見かけたら、絶対に手放しちゃダメよ」
祖母はそう言って、私の彼氏の手をじっと見つめた。
指の関節に、少し濃い毛が生えている。
祖母はなぜか満足そうにうなずいた。
「この人、大事にしなさいね」
私は笑ってしまった。
「おばあちゃん、手の毛で人柄が分かるの?」
祖母は答えず、彼の手をぽんと叩いた。
当時の私は、祖母が何を言いたいのか分からなかった。
私の彼氏、健太は、決して目立つ男性ではなかった。
高級ブランドを身につけるわけでもなく、気の利いたセリフを言うわけでもない。
デートはいつも庶民的な定食屋。
誕生日のプレゼントも、私が以前「これ便利そう」と言った小さな財布だった。
一方、私の友人たちは違った。
「もっといい男がいるでしょ」
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