「もう、来月の支払いができません……」
創業50年の小さなソーセージ工房で、社長は売上帳を見つめたまま、深くため息をついた。
工房の中では、今日も職人たちがソーセージを作っていた。
肉を選び、丁寧に味を整え、1本ずつ腸詰めにする。
写真に写っているのは、何十年も変わらず作り続けてきた自慢の商品だ。
国産原料にこだわり、添加物をできる限り使わない。
大量生産で安く売るよりも、家族に安心して食べてもらえるものを届けたい。
それが、50年前に創業者が決めた工房の約束だった。
しかし、そのこだわりが今、工房を追い詰めていた。
国産原料の仕入れ価格は上がり続ける。
電気代も包装資材も値上がりする。
それでも、長年買ってくれているお客さんのことを思うと、簡単には値上げできなかった。
大手メーカーの商品は、スーパーの棚にずらりと並んでいる。
価格も手頃で、宣伝も上手い。
一方、町の小さな工房には、大きな広告を出す余裕もなかった。
「味には自信がある。でも、知ってもらえなければ選んでもらえないんだな……」
社長は、冷蔵庫に並ぶ商品の写真を見つめた。
帳簿には赤字の数字が並んでいた。
銀行への返済、従業員の給料、原料の仕入れ代。
どれも待ってはくれない。
ついに社長は、工房を続けること自体を考え直さなければならなくなった。
50年間守ってきた製法を変えれば、少しは安く作れるかもしれない。
でも、それでは創業者との約束を裏切る気がした。
「あと少しだけ、今のやり方で頑張れないだろうか」
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