飛行機が着陸して、シートベルトサインが消えた瞬間だった。
まだ機体は完全に落ち着いたばかりで、通路も狭い。私は後方の座席に座っていて、どうせすぐには降りられないことを分かっていた。
それなのに、周りの人たちは一斉に立ち上がった。
頭上の荷物棚を開ける音。
キャリーケースを引きずり出す音。
通路に人がぎゅうぎゅうに詰まっていく気配。
私は窓側の席で、その様子をぼんやり見ていた。
「なんで今立つんだろう」
前方の出口はまだ遠い。後ろの席からなら、降りられるまでかなり時間がかかる。しかも、預け入れ荷物がある人は、結局ターンテーブルで待つことになる。
そう思って、私は座ったままスマホの通知を確認していた。
すると、隣の通路側に座っていた男性が、まだ誰も動けないのに立ち上がり、荷物棚を開けた。
大きなキャリーケースを下ろそうとした瞬間、棚の奥から小さな紙袋が滑り落ちた。
「危ない!」
斜め前に座っていた女性がとっさに手を出したけれど、紙袋は座席の肘掛けに当たり、中に入っていたお土産の箱が床に散らばった。
男性は「あ、すみません」と軽く言っただけで、すぐに自分のキャリーを通路に置いた。
そのせいで、通路はさらに詰まった。
前のほうでは、子どもを連れたお母さんが座席から出られずに困っていた。年配の女性は、立ったままバッグを抱えてよろけている。客室乗務員さんが何度も「前方のお客様から順番にご案内します」と声をかけていた。
でも、立ってしまった人たちは、もう座り直せない。
通路はまるで動かない列になった。
私はため息をついた。
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