会社の全体グループに通知が来たのは、月曜の朝9時12分だった。
ちょうど朝礼が終わり、各自が席に戻ってパソコンを開き始めた時間だった。私もコーヒーを置き、今日の予定を確認しようとしていた。
そのとき、社内チャットの通知音が鳴った。
送り主は、入社2年目の後輩。
普段から少し口が軽いところはあったけれど、仕事そのものはそこそこできる子だった。
だから最初は、普通の業務連絡だと思った。
でも、画面に表示された文章を見た瞬間、フロアの空気が止まった。
そこには、明らかに同期へ送るつもりだったであろう愚痴が並んでいた。
「今日の会議だるすぎ」
「部長、話長いだけで中身ない」
「先輩たち、古いやり方しかできないのきつい」
「まあ適当に合わせとけばいいか」
私は思わず、画面を二度見した。
しかも送信先は、同期の個別チャットではない。
会社の全体グループ。
部長も、課長も、役員も、総務も、人事も、全員が入っている場所だった。
数秒だけ、誰も反応しなかった。
既読だけが、ものすごい勢いで増えていく。
10、25、48、73。
数字が増えるたびに、こちらの胃が痛くなった。
後輩本人もすぐ気づいたらしい。
慌ててメッセージを削除した。
けれど、もう遅かった。
社内チャットは、削除しても通知欄には一部が残る。スマホで見ていた人もいる。何より、あの数秒の沈黙で、全員が内容を読んだことは明らかだった。
記事はまだ終了していません。次のページをクリックしてください