「ここに停めるの?」
朝の配達時間帯、私は細い生活道路の前で思わず足を止めた。
道の片側に、大きなミニバンがどんと停まっていた。車体は白くて目立つ。しかも、寄せ方が中途半端で、道路の幅をかなりふさいでいる。
この道は、ただの裏道ではない。
近所の人が駅へ向かう道でもあり、軽自動車の配達カーや宅配便の車が何台も通る道だ。朝は子どもたちの通学もある。
少しでも車がはみ出していれば、みんなが気を遣って通らなければならない。
最初に困ったのは、配達の軽バンだった。
運転手さんはゆっくり近づいて、何度もハンドルを切った。ミラーがぶつかりそうになり、反対側の塀との隙間もほとんどない。後ろには別の車が詰まり、歩行者も立ち止まった。
それでもミニバンの持ち主は現れない。
近くの家の奥さんが小さくため息をついた。
「またあの車よ。前も同じところに停めてたの」
私はその言葉で、ただの一度きりではないのだと分かった。
数分後、ようやく持ち主らしき男性が近くの家から出てきた。手にはスマホ。悪びれる様子もなく、ゆっくり歩いてくる。
配達員さんが窓を開けて言った。
「すみません、ここ通れなくて困ってます」
すると男性は、面倒くさそうに笑った。
「いや、ちょっとだけだから」
その「ちょっとだけ」の間に、すでに車は3台止まっていた。通学中の子どもたちは、車道側にふくらんで歩いている。
見ているこちらが怖かった。
私は強い言葉を飲み込み、スマホで状況を撮影した。車のナンバーが見えるようにではなく、道幅と停め方、後続車が詰まっている様子が分かる角度で撮った。
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