「この問題、どういうことなの?」
息子が帰宅するなり、ランドセルから1枚の答案用紙を取り出した。
問題には、こう書かれていた。
「お母さんは37歳です。息子は15歳です。2人の年齢を合わせると何歳ですか?」
息子が書いた答えは「52歳」。
37+15=52。
誰が見ても、計算は合っている。
しかし、答案には大きな赤いバツが付いていた。
その横には、先生の赤い文字でこう書かれている。
「よく問題を読もう!」
息子は納得できない様子で、何度も問題文を読み返していた。
「お母さん、僕のどこが間違ってるの?」
私は答案を受け取り、スマートフォンの電卓でも計算してみた。
37+15。
表示された数字は、やはり52。
「先生が問題を間違えたんじゃない?」
そう言うと、息子は少し安心したように笑った。
だが、翌日の授業で先生は、クラス全員の前でこう言ったという。
「この問題で52歳と答えた人は、問題を理解できていません」
息子は黙ってうつむいた。
周囲の子どもたちも、困惑していた。
中には「じゃあ答えは何歳なの?」と聞く子もいたらしい。
先生は黒板に「年齢を合わせる」という言葉を書き、
「お母さんと息子の年齢を同じにする、という意味です」と説明した。
しかし、問題文には「年齢を合わせると」としか書かれていない。
「合計すると」なのか。
「同じ年齢にすると」なのか。
大人でも迷う表現だった。
私は感情的に学校へ怒鳴り込むことはしなかった。
答案用紙の写真。
問題文のコピー。
そして、国語辞典の「合わせる」の意味を印刷して持参した。
担任の先生は最初、「採点基準に従っただけです」と話した。
そこで私は、静かに尋ねた。
「では、この問題の正答は何歳ですか?」
先生はすぐには答えられなかった。
教頭先生が問題文を読み返し、答案の赤いバツを見つめる。
その数秒後、職員室の電話が鳴った。
受話器を取った教頭先生の顔から、みるみる血の気が引いていった。