「えっ、ここ私の席なんですけど……」
新幹線に乗り込んだ私は、予約していた座席の後ろを見て固まった。
そこは、特大荷物スペース付きの座席だった。
大きなキャリーケースを置くために、わざわざ追加料金を払って予約した場所だ。
ところが、スペースにはすでに2個のキャリーケースが置かれていた。
しかも、私の席のすぐ後ろを完全にふさいでいる。
「これじゃ、私の荷物が置けない……」
仕方なく、キャリーケースを足元に置いてみた。
しかし、座席の前は狭く、足を伸ばすこともできない。
通路に少しでもはみ出せば、乗務員や他の乗客の邪魔になる。
隣の席には、外国人の男性が座っていた。
おそらくキャリーケースの持ち主だと思ったが、男性はイヤホンをしてスマートフォンを見ている。
「すみません、この荷物は……」
声をかけようとしたものの、怖くて言葉が出てこなかった。
車内はすでに発車直前。
私は結局、重いキャリーケースを足元に置いたまま座った。
膝は荷物に当たり、身動きが取れない。
前の座席を倒すこともできない。
隣の男性が悪気なく荷物を置いたのかもしれない。
そう思って我慢しようとした。
しかし、数分後、通路を通った車掌が足元の荷物に気づいた。
「こちらのお荷物は、座席の後ろに置かれる予定でしたか?」
私は予約画面を見せた。
「特大荷物スペース付きの座席を取ったのですが、すでに2個置かれていて……」
車掌は荷物のタグを確認し、隣の男性に英語で声をかけた。
男性は驚いた顔でキャリーケースを見つめた。
そして、何かを説明し始めた。
どうやら、男性はそのスペースが特定の座席の予約者専用だと知らなかったらしい。
車掌はすぐに別の空きスペースを確認した。
しかし、その直後、男性が見せた予約画面を見て、車掌の表情が変わった。
なんと、その2個の荷物には、私の座席番号とは別の予約情報が表示されていた。