「ゴミは持ち帰らず、その場に置いてください」
大阪の淀川花火大会で流れた、まさかのアナウンスに耳を疑った。
普通なら「ゴミは各自で持ち帰りましょう」と呼びかけるはずなのに、会場では何度もこう繰り返されていた。
「ゴミは持ち帰らないでください。置いて行ってください!」
最初は聞き間違いかと思った。
しかし、周囲を見渡すと、会場のあちこちにゴミ袋を置くための場所が設けられている。
どうやら、花火大会終了後の混雑を避けるため、来場者が無理にゴミを持って移動しないよう、指定された場所に置いて帰ってもらう仕組みらしい。
「それなら便利だね」
隣にいた友人は、食べ終わった焼きそばの容器を袋に入れながら笑った。
だが、花火が終わった瞬間、状況は一変した。
数万人が一斉に帰り始め、さっきまで美しかった河川敷が、弁当の容器、飲み物のペットボトル、紙皿、うちわで埋め尽くされていった。
「これ、本当に大丈夫なの?」
初めて来たらしい女性が、不安そうに周囲を見ていた。
「置いて行っていいって言われたから、みんな置いてるんだよ」
そう答えたものの、私自身も少し心配だった。
中には、指定場所ではなく、通路の端や草むらにそのまま置いていく人もいた。
さらに、飲み残しの飲料を地面に流したり、食べ物を袋に入れず放置したりする人までいる。
「置いていい」と「どこにでも捨てていい」は、まったく違う。
そのとき、会場スタッフの男性が大きな声で呼びかけた。
「ゴミは必ず袋にまとめ、指定の場所へ置いてください!通路や草むらには置かないでください!」
スタッフたちは、置き去りにされた大量のゴミを一袋ずつ分別し、危険物がないか確認していた。
暑さと疲労で顔を真っ赤にしながらも、黙々と作業を続けている。
翌朝、ニュースで見た会場は、あれほどゴミで埋め尽くされていたとは思えないほどきれいになっていた。
「ゴミを持ち帰らず、置いて行ってください」という案内には、混雑対策と清掃の仕組みがあったのだ。
ただし、最後に必要なのは来場者の最低限のマナー。
置いていい場所に、袋にまとめて置く。
それだけを守るだけで、花火大会の美しい景色は、最後まで守れるのかもしれない。