押し入れの奥から、ないと思っていた曽祖父の軍服が出てきました。
最初に見つけたのは、古い布に包まれた上着でした。手に取った瞬間、普通の古着ではないと分かりました。生地はずっしり重く、ボタンも今の服とはまったく違う雰囲気。母に見せると、しばらく黙ったあと、小さな声で言いました。
「これ、ひいおじいちゃんのじゃない?」
その一言で、家の空気が変わりました。
曽祖父は日露戦争のころの人で、家族の中では名前だけが残っていました。写真も少なく、詳しい話を聞ける人ももうほとんどいません。軍服も昔はあったらしいけれど、引っ越しや片付けのたびに「もう失くなった」と言われていました。
ところが、押し入れのさらに奥から、次々と出てきたのです。
上着だけではありません。
下の服、コート、ケープ、フードまで。
まるで誰かが長い時間、見つけてもらうのを待っていたように、ひと揃いで残っていました。
私は思わず息をのみました。
「これ、全部そろってる……?」
母も驚いて、畳の上に一つずつ並べました。布は古く、ところどころにシワやほこりがありましたが、大きく破れているわけではありません。
ボタンも残っていて、ケープの形もはっきり分かります。
何より不思議だったのは、ただの古い衣類なのに、目の前に置いた途端、曽祖父という人が急に近くに感じられたことでした。
私はとりあえず、風通しのいい場所に干しました。直射日光は怖かったので、日陰に近い場所で、湿気を飛ばす程度にしました。
でも、すぐに悩みました。
「これ、クリーニングに出していいのかな?」
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