土曜日の夜、田原の花火大会へ向かうため、私は田原駅近くの駐車場にいました。
会場周辺はすでに人でいっぱいで、駐車場の中もいつもと違う熱気がありました。家族連れ、浴衣姿のカップル、子どもを抱いたお父さん。みんな花火を見る前の明るい顔をしていました。
私は駐車場の4階で、車を停めたあと少しだけ周りを確認していました。混雑している日は、出庫時や切り返しで接触事故が起きやすいからです。
そのとき、少し離れた場所で1台の車が妙な動きをしているのに気づきました。
狭い通路で向きを変えようとしている車が、前に停まっていた車のライト付近に近づいていきます。
「あ、ちょっと近い」
そう思った次の瞬間でした。
コツン。
小さな音がしました。
最初は軽く触れただけかと思いました。でも運転手は慌てた様子でバックし、また前に出ました。
そして、また当たったのです。
私は思わずスマホを向けました。念のため、という気持ちでした。混雑した駐車場では、あとから「当たっていない」「知らない」と言われることもあるからです。
ところが、その車はさらにもう一度、ほとんど切り返しもせずに同じように前へ出ました。
3回目の接触でした。
さすがに周囲の人も気づき始めました。近くにいた男性が眉をひそめ、子ども連れのお母さんが足を止めました。
当てた側の運転手も、こちらがカメラを向けていることに気づいたようでした。少し顔をこわばらせたあと、車を停めて警備員のところへ歩いていきました。
その様子を見て、私は少し安心しました。
「ちゃんと警備の人に話すなら大丈夫かな」
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